王朝年代記

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王の年代記

カンボジアの王(家)の記録集。18世紀以降、数代の王の命によって編纂されたもので、数多くのテキストがあり、建国神話に始まり19世紀に至るまでのカンボジア史を記述している。

現在40種類以上が確認されており、最も古い版本は1796年のものだが、1898年から1966年にかけて執筆された。ただし、シャム語原本のみ存在する。

この『王の年代記』は、カンボジア史、特にポスト・アンコール期を研究する上で重要な資料であるが、40種類以上が確認されているテキストのうちカンボジア国内に保存されていた写本の多くは、1970年以降20年以上にわたって続いた内戦期に所在不明となった。国外では主にフランスでテキストが保存されている。

ポスト・アンコール期の研究は、海外資料や碑文を除くと、利用可能な資料が少ないことが障害となっており、研究者の数も少ない。この『王の年代記』は、後代に編纂されたものであることを考慮して扱わなくてはならない資料であるとはいえ、近年の研究で批判の多い「フランス植民地期に構築されたカンボジア史」以前の国内資料として貴重であることにかわりはない。

(詳しくは、北川香子「カンボジア年代記」池端雪浦他編、早瀬晋三・桃木至朗編集協力『岩波講座東南アジア史〈別巻〉東南アジア史研究案内』岩波書店、2003年を参照)